長距離バス

 

いつからか、バスが好きになった。

 

幼い頃の私は乗り物酔いがひどく

街中の路線バスでさえ

ものの5分10分で酔ってしまうほど。

学校の遠足で乗るバスは

一番前が指定席で

エチケット袋を握り締めながら

 いつも祈るように乗っていた。

高校の時に

部活の仲間達と顧問の先生の車に乗り合わせて

日帰りの旅行をしたのだが

その帰り道

皆の前で車の中に盛大に粗相をしてしまって

いっ時トラウマになってしまった。

できるだけ

 車は避けていたはずなのに。

 

それが

いまではバスが大好きになっている。

不思議なものだが

ひとは変われるのである。

 

バスに乗る時は必ず窓際を選ぶ。

外の景色を独り占めできるからだ。

私は乗ってから降りるまで

どんなに長い距離でも

ずっと窓の外を見ている。

トンネルの中でも、真夜中でさえも。

そんな私だけの車窓劇場の中で

一番好きなシーンがある。

それは

 乗客の乗り降りだ。

 

特に田舎の長距離バスのバス停では

 毎回様々な感動ストーリーが生まれる。

 

 ・・・もちろん生まれるのは、

  私の頭の中での話なのだが。笑

 

実家を離れる若者と両親

上京してから初めて帰省した学生さん

迎えの車の中で待つ父

挨拶もせずに黙ってバスに乗り込む娘

退職した上司を慕って会いにきた帰りのサラリーマン

 

いつか

この妄想ストーリーを

 一冊の本に纏めてみたい。